タイピングのレイテンシーについて

数日前に『カンデル神経科学』という本を購入した。 別にタイピングについて考えるために入手したわけではないが、有用そうな情報が載っていたので共有しておく。 まず"感覚閾値"について。 感覚閾値とは、意思決定において決定者の正確性75%を維持するのに必要なモーションの強さのことだ。 例えば、画面の中央に赤い丸を表示しておきそれを左右に動かすプログラムを組み、回答者はその動きに合わせて視線を動かす。 この時に赤い丸が動く距離がモーションの強さだ。 モーションが強ければ決定者の正確性が上がり、反対に弱ければ下がる。 また、意思決定にかかる時間が長ければ正確性が上がり、短ければ下がる。 時間をかければモーションが弱くても決定者は正確性を上げることができる。 もちろん無限に上がったり下がったりするのではなく一定ラインを超えると飽和する。 ここで一点気がかりがある。 それはタイプウェルの終焉などにより競技タイピング会全体でレイテンシーが以前よりも意識されるようになったことだ。 レイテンシーを上げるための具体的な手段についてはWHさんの記事に詳しいが、上述の実験結果を信頼するならば、やたらめったらレイテンシーを上げればいいわけではないことがわかる。 レイテンシーを上げるというのは意思決定にかける時間を短くする行為でしかない。 タイピングアプリにおいてはフォントサイズや表示位置が変わらない限り、基本的にモーションの強さが変わることはないだろうからだ。 要するにタイパーに要請されるのは正確性とレイテンシーのバランスをうまくとることだ。 そこで、応答速度を向上させる要素を2点取り上げる。 まず1点目が"注意"だ。 これはWHさんの記事でも紹介されているが、1文字目が表示される位置に予め視線を合わせておく行為のことだ。 本では更に、次のタスクが発生する前にその位置で光の点滅を起こすなどをすると応答速度が向上すると紹介されている。 2点目が字体だ。 直前のタスクと直後のタスクで字体が統一されていると判断速度が向上する。 1つのアプリ内でワード毎に字体が変わることは少ないと思うが、1ワード目のレイテンシーを向上させるのに役立つかもしれない。 レイテンシーに関わる小手先の理論は以上であり、反復練習が効果を齎すかどうかは正直言って怪しい。 本の中では反復練習は増分運動と呼ばれているが、これはあくまで同じ行為を繰り返していくうちに、その精度と速度が向上するという話だ。 ランダムで表示される文字に対して応答時間を短くするというのは初めに紹介したとおり正確性とトレードしているにすぎない。 これが増分運動にあたるのかどうかはわからない。 まぁ、だからバランスよくやろうねという提案をしたかったわけですはい。 ※追記 白狐さんの記事 ↑こちらの記事がより詳しく説明してくれている。 ま、まぁ、僕のはただのオタクの日記だから。